水瀬いのり 4th Album「glow」感想

水瀬いのりさんニューアルバム「glow」の発売からだいぶ日がたってしまいました。書こう書こうとは思っていて頭の中では感想をまとめていたのですが、なんとなく気が進まなかったり体調が悪かったりで、結局この始末。。

熱が冷めないうちに、前回の答え合わせも兼ねて、全曲しっかり聞いた感想を記録しておきます。

注意事項

  • いわゆる全肯定オタクではないので、「全曲神!イノリチャンが歌ってる曲は全部星5!それ以外は認めない!」みたいな人はブラウザバック推奨です。ここは私のブログなので、忌憚なく厳しい意見を書いているところもありますよ。
  • 長いので時間ない人は最後だけ読んでいただければと思います。

全曲感想

M01. sunrise glow(overture)

チクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタク…

あれ、今聴いてるのは水瀬いのりさんのアルバムだよな?

時計の針のチクタクから、徐々に徐々に、やや慎重に盛り上がりを増しつつ滑らかに「僕らだけの鼓動」に繋いでいく展開。ライブの始まりが目に浮かぶような高揚感、ワクワクを掻き立てるビート。こういうインストがあると「さぁ、アルバム聴くぞ!」ってなるのでいいですね。

で、誰のアルバムでしたっけ?

M02. 僕らだけの鼓動

「「僕だよ」」

\イノリチャンなの!/

歌いだしでいのりちゃんがぬるっとステージに登場する姿が浮かびました。

おぉ、今までになかった優しい声。イントロの雰囲気的に力強い歌い方で来るのかと思ってたので、優しく甘めの声だったのですごく意外でした。シンプルに声がかわいいんじゃ。

最初聴いたときの正直な感想としては、曲調的にカッコイイ歌い方を期待していました。しかし、何回か聴いていくうちにこの歌い方がしっくりしてきました。今回のコンセプトは「日常に寄り添うアルバム」。一曲目から(正確には二曲目)キレッキレで元気100%だと聴いてる側が疲れるんじゃないかなと。飛ばし過ぎると聴く側もやっぱりそれなりにエネルギーを消費するはず。ふとした時に聴きたいなと自然に思わせてくれるのは、やわらかい歌声だからこそですね。アップテンポだけどしつこくなくていくらでもいけちゃう。

メロフラなどでは、アルバム新曲は自然で本来のいのりさんらしい歌い方なのでファンの皆さんは驚かれるかもしれない、とおっしゃっていました。なるほど、確かに過去曲であったような力んだ歌い方ではなくなっていますね。アーティスト活動新章の幕開けを垣間見た気がしました。

M03. We Are The Music

あぁ~~~、好き。イントロからして好き。

「僕らだけの鼓動」に引き続き、キャラソンのような作られた歌声ではありません。ビートにのれる曲なのに、どこか切なく甘酸っぱさも残している。まだ3曲目なのにライブがもう終わりそうな寂しさがチラつく…終わらないで。。

サビ部分は声の音源が二重になっていてバイノーラル録音のような作りになっているとのこと(どっかのインタビューで読んだ)。ほーん、不思議な浮遊感を感じるぞ。音は別のところからそれぞれ聞こえるのに一体感がある感じ、これがいわゆる「グルーヴ感」というやつか!1

ダンスミュージックのような一体感と浮遊感、ちりばめられた様々な音、どことなく切なさを感じさせるメロディ、すべてが絶妙なバランスで組み合わさっているなと感じました(大真面目オタク)。お高めのイヤホンとかスピーカーで聴くと色々な音を発見できたり楽しい曲です。TAKU INOUEさん、御見それしました。

曲順に関してもまさしく3曲目のテンション感(個人の感想です)。いのり楽曲としては珍しい、音そのものやミキシングが楽しめる曲。アルバムの中で強烈な個性が光っています。

M04. 風色Letter

お、なんか懐かしいフォークソングっぽい。初めて聴いたときになぜだか夏川りみさんの「涙そうそう」が脳裏に浮かびました2が、私の世代的にはコブクロやゆずを思い浮かべる方が多いのではと思います。爽やかで初夏にぴったりな素敵な曲ですね。

作曲の新田目 駿さんが手がけたいのり楽曲というと、「旅の途中」や「Wonder Caravan!」ですが、2曲に比べると「風色Letter」は大人っぽい落ち着きが感じられます( ˘ω˘ )

離れて暮らす昔の友人を想う気持ちが込められているそうですが、何を隠そう私もこの曲のターゲットど真ん中3なので、この歳で出会えたことを嬉しく思います。(大学時代の友達と呼べる存在は片手で指が余るくらいしかいませんが。)新しい環境、慣れない生活、昔を思い出して「あの頃はよかったな~」と後ろ向きになってしまいがちな近ごろの私ですが、「この場所で 私もまた進みたい」の歌詞にポンッと背中を押してもらえるような気持ちになります。

落ちサビで伴奏が一気におとなしくなる部分では、いのりさんの声の美しさが際立っているので、ぜひいいオーディオセットで聴いてほしいです。

M05. Starlight Museum

この記事を読んでくれている方にはもはや説明不要ですね。2020年12月2日リリースの水瀬いのりさんアーティストデビュー5周年アニバーサリーソングです。いのりさん自身としても、ここ数年の曲では一番思い入れの深い曲なのではないかなと思います。

風色Letterの昼~夕方のイメージから反転して夜ゾーンに入っていく構成もライブっぽさがあっていいですね。やはりスタラはいのりさんの5年間の歩みそのもの、ファン歴の浅い私が語るのは恐れ多いのですが、この曲にはどっしりとした安心感がありますし、曲順的にもglowアルバムの重心ともいえる存在なのではないかなと考えています。

M06. Melty Night

プリン 冷蔵庫のご褒美 だけどね 細菌が増してる~♪

にしか聞こえなくなったぱだちゃです。食べかけはお早めにお召し上がりくださいね。

Melty Nightは完全にメロフラのエンディングとして定着しましたね!この曲が良すぎて日曜日はよく眠れています( ˘ω˘ ) 聴きながらハーゲンダッツ食べたい曲個人的ナンバーワンです。

M05のスタラが「重」であったのに対して、こちらは「やや軽」のイメージで同じ夜ゾーンの中でもバランスが取れているように感じます4。歌詞はちょっと幼いというかadorescenceって感じですが、音作りはジャズ風味で大人っぽいという何とも不思議な曲だなと改めて思います。いのりさん、ぜひライブで私のココロをメルティにしてくださいね💛5

M07. ココロソマリ

すこすこのすこ。いのりさんと同じく、一人っ子で家庭環境が良好な環境で育った私には、めちゃくちゃ沁みます。「大好きだと何度伝えたら ずっとそばにいられるのかな」の部分は何度聴いてもうるっとしますし、ハロホラツアー名古屋公演では年甲斐もなく号泣しておりました。今までのシングル表題曲で一番好きかもしんない。

M08. 八月のスーベニア

あれ、聴いたことあるぞ?と思ったらこれでした。

似ていることが悪いというつもりはありませんし、人によっては似てないだろというツッコミもあるかと思いますが、ファーストインプレッションはやっぱり「青い栞」でした。

この曲を特徴づけているのはなんといっても、歌いだしのブレス(ハッ)と、キーの低さではないでしょうか。スタラのAメロもなかなかの低さですが、いのりさんの曲だと知らなければ当てられないかもしれません。

アコースティック中心で夏っぽいサウンドですが、三月と群青同様に歌詞はジメっとしてますね。切なさ、懐かしさ、寂しさ、諸々の感情が曲を聴き終えたあともずっと胸に残り続けるような、重苦しさを感じました(私はこういう感じ大好物ですね)。

これから 長い長い夏に君を
置いていくんだ
置いていくんだ

ここの歌詞ヤバすぎだろ!(語彙力)「置いていくんだ」なぜ二回言った?しかも「長い夏」じゃない「長い長い夏」です。切なさという名の暴力で心から血の涙を流しました。生で聴いたら感受性ぶっ壊れて廃人になる未来しか見えない。

ずっと忘れないよ
ずっと忘れないよ
ずっと忘れないよ
いつか君に会う日まで

これもうこの世で君に会うことないフラグ立ってますよ。何で三回言った?そう、たぶん会えないからです(号泣)歌詞をちゃんと読んでみると、やっぱり「君」はあの夏を最後にこの世にはいない雰囲気出てますね(諸説あり)。

歌詞だけだったら鬱ソングなんだけどもいのりさんの歌声とメロディラインが爽やかすぎて、何度も聴きたくなる中毒性があります。

余談ですけど、さだまさしさんの曲に「八月のガーデニア6」という曲があります。「八月のスーベニア」はアルバムの8曲目ですが、「八月のガーデニア」もアルバムの8曲目。偶然でしょうか?オマージュですよね??

あと、歌詞からして、ガーデニアの「君」はたぶんお亡くなりになってます…

M09. HELLO HORIZON

あの夏の余韻に浸る間もなく、唐突のハロホラ。私の頭は混乱します。え、あの夏の君は?ずっと忘れないんじゃなかったの?…ちょっと待ってよ~~~ (朝霧高原を引きずり回される音)

うーん、急に世界観のスケールがデカくなりすぎてついていけないですね、ごめんなさい。アルバムに入れるにしてもここ以外にあったんじゃないかな7。曲自体はいいんですけど、アルバムの中では浮いてしまっている印象がやっぱり否めないですね…とにかくパワフルな曲なので、いのりさんがglowアルバムで表現したかったコンセプトからも外れてしまっているような。違和感はいったん飲み込みます。

M10. REAL-EYES

disとかじゃなくて予想編で書いたのでマジで書くことがない。

M11. パレオトピア

新曲で仕切り直し。

ファーストインプレッションは、空が印象的な世界観が目まぐるしく変わる物語と共にぎゅっと凝縮されている感じ。全般的に鬱屈とはしているけれどもさわやかな後味。これ一曲で新海誠作品できちゃうくらいのエネルギーを感じました。

いきなりボーカルで始まるいのりちゃんの曲ってすごく新鮮に感じました。というか今までに無くない?「そこにいるんでしょ」から一気に主題へと駆け上がっていく感じはまさに(最近の)新海誠感あると思うんですけど共感得られませんかね。

歌詞の言葉選びもセンスがキレッキレです。

昼の空が嘘みたいな鈍色
土をなぞりながら膝をついていたんだ
味のしない思い出と 喉に痞えた勇気の影に
雨宿りの当てばかりを探した

出だしが特に好きで、灰色の空の下、息が詰まるような重苦しい感覚を五感で表現しているんですよね。まず、「鈍色」で視覚、「土をなぞる」「膝をつく」でザラザラジメジメとした土の「触覚」、「味のしない思い出と喉に痞えた」で味覚(ちょい無理あるけど)、といった具合に、一聴してはっきりと情景が目に浮かびます。「味のしない思い出」なんて表現を生み出せる方は柳舘周平さんか畑亜貴さんくらいじゃないですか?

ほかにも歌詞の好きポイントはいっぱいあります。

鉄の雨が塗りつぶした虹色

「鉄の雨」は割とよく聞く表現ですが、「虹色を塗りつぶす」と出るセンス素敵…

伽藍洞になった胸に 涙を流すなら

伽藍洞で「胸」を形容するのも初めて見ましたが、心情が凄く伝わってくる。精神的に疲れ果てて胸にぽっかり穴が開いてしまった状況でしょうか。もはや説明は無粋といえる、ハッとさせられる表現ですね。

この曲に関してはいのりさんはほとんど口をはさんでおらず、11曲目は実質柳舘さん指名枠だったことがインタビューなどから伺えます。案の定、いい意味でやりたい放題やってくれましたね。先生といえば童話のような世界観が特徴ですが、童話にしては情景描写がリアルすぎる。

サウンドの要素要素は前作「クリスタライズ」と全く異なりますが、メロディの展開やリズムは「お前らこういうの好きだろ~」と言わんばかりの柳館節が健在といった感じでしょうか。

作曲者の話ばかりしてしまってすみません。いのりさんだからこそ、柳舘先生の世界観を余すことなく表現できるのだということは言うまでもないですね。

M12. 心つかまえて

本アルバムの個人的MVPです。イントロ一音目で優勝の予感がしましたよ。

We Are The Musicやパレオトピアのような凝った作曲と対照的にシンプルな曲ですが、こういう雰囲気をアルバムに一曲は入れてほしかったので安心しました。

ほっと落ち着けるおうちのような曲。東京での生活にもそろそろ疲れてきたので、故郷に帰省したくなってきましたよ8。個人的には、「風色Letter」と「心つかまえて」が一番自然なおいのりを感じます( ˘ω˘ )

いのりさんのアーティストとしてではなく、生の人間としての考え方に 身の回りにある小さな幸せ9を大切にしていこうという姿勢があると思います。この曲はまさにそれを表現しているのではないでしょうか。さまざまな事情で精神的に消耗してしまった人を癒してくれる両親のような温かさを含んでいます。

心がつねに疲れている人間なので、こういう曲は本当に沁みますね(泣)

M13. 僕らは今

リリース直後はココロソマリの強すぎるカップリングという印象だったのが、のちのMV制作とライブでぶち上がり曲としての人気を不動のものとし、アルバムにおいてはglowという物語の終わりをほのめかす役割を果たしているように思います。

M14. glow

予想編の時点でフルで解禁されてたので改めての感想はないですが、アルバムを通しで聴いてみるとイントロのマーチングバンドが堂々たるフィナーレにぴったりだなぁと感じました。

「未来に筋書きなんて 何もいらない」で曲もアルバムもすっと終わるのはよきね。glowを聴き終えた後、いのりさんが呪縛10(レーベルやファンの期待、商業的な重圧11など)から逃れ、のびのびと活動している姿を思い浮かべましたよ。

総括

長文をここまで読んでいただきありがとうございました12

既存曲とアルバムの親和性という観点で一部「ん?」というところはありましたが、新曲がどれも素晴らしく、1st, 2nd, 3rdに続き安定した高い完成度のナンバーをそろえられているのは作曲・編曲・作詞者の方々の努力の結晶と、それを選択したいのりさんの慧眼によるものでしょう、と謎の上から目線の感想を述べておきます。

日常の中にあるアルバムということで、いままでよりも気軽に聴ける雰囲気は多分に感じるところではあります。今までのアルバムはキラーチューン揃いでそれはそれは名作でしたが、アップダウンも結構激しいので、実は向き合うのにちょっと構えが要るなと思ってました(個人的にはですけど)。肩の力を抜いて皿洗いや洗濯をしながらでも聴けるのがまさにこのアルバムの魅力です。曲順も全体的にこだわって作られているので、ドライブや旅行シーンでの相性が抜群なのもGOODです。

一方で、可愛い&カッコイイ全振りの曲は一切排してしまったが為か強烈なインパクトを残した新曲は少ない印象です(既存アルバム曲が強すぎるせいです)。が、ライブでの表現やリリックビデオ、MVなど多次元展開で化ける可能性は大いにあるので、長い目で見守っていこうと思います。

以上です。ツアー楽しみですね!

  1. よくわかってない。
  2. この曲も「涙そうそう」を聴きながら書いています
  3. メロフラ第303旗にて。新社会人くらいを想定しているそうです。
  4. 制作サイドはそこまで考えてないかもしれません
  5. 純粋に気持ち悪いな
  6. クチナシの花のことだそう。初夏に白い花を咲かせる。
  7. アルバムに入れるのならoverture消して1曲目に持ってくるしかない気もする
  8. 筆者が住んでいるのは厳密にいえば東京ではないし、転勤族的な感じだったので故郷というほどの場所もありませんが。
  9. かの村上春樹さんのエッセイにも小さいけれど確かな幸せ、氏曰く「小確幸」という人生訓ですね。
  10. 表現が正しいかはいろいろあると思いますが、少なくともプレッシャーはあるでしょう
  11. 声優アーティスト界隈の激しい競争環境とか
  12. 暇なんですか?

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